以下の記事は、2013年4月頃の回想録です。
タイで就職することを諦め、起業してみることを思い立った僕は、さっそく自分にはどんなことが出来るのだろうかと具体的に考え始めたのです。
そこで、まず一等最初に思い浮かんだのがお金の問題。
やはり、お金のことを抜きにしては起業もへったくれもありませんでしたから。
自分の用意できるお金は、現状幾らぐらいあるのかということを改めて精査してみたのです。
実は当時の僕には、少ないながらも多少の貯金がありました。
会社を退職した当時で確か170万円程、約2か月のタイ旅行を終えて日本に帰ってきた時点においても、依然としてその貯金は約130万円弱をキープしていたのです。
これらの貯金は、僕が大学時代からコツコツ貯めて来たお金でした。
大学時代を合計して、ざっと70万円。
その後、就職してからも毎月の給料から約5万円程度を貯金へと回し、新卒入社後初めて貰った冬のボーナス約50万円に至っては、その全額を貯金へと回していたのでした。
なぜこれ程まで貯金をすることに対してどん欲になれたのかは、正直よくわかりません。
でも少なからず、自分が無趣味な人間で、且つ物欲もほとんど持っていなかったことは影響していたかもしれません。
そして何より、自分が近い将来仕事を失うかもしれないという嫌な予感を僕自身、入社当時からずっと持ち続けていたのかもしれません。
何しろ、高校を辞めてからというもの、一度たりとも仕事が長続きしたことがありませんでしたから。
(学生時代のアルバイトは例外)
だから、いざと言う時に食いっぱぐれないようにと、備えは万全にしておきたいという意識を常に持っていたのでした。
さて、そう言う事だったので、自分がもしタイで何かやるということになれば、その130万円に関しては全てつぎ込んでも良いと考えていました。
今まで苦労しながら貯めて来たお金ではありましたが、とうとう自分の将来のために使う時がきたのだと晴れ晴れしい気持ちにも思えましたね。
ただそうは言っても、130万円全てを銀行からおろしてしまった場合、年金や大学の奨学金の返済は出来なくなってしまいます。
でも、なんとか手元にお金は残しておきたい。
と言うことで、年金と奨学金返済に関しては、猶予の手続をすることにしました。
かくして、予算130万円程で何かの事業を立ち上げてやろうと、いざアイデアを練りだしてみたのですが・・・。
そう簡単に良いアイデアなんて思いつくはずがないんですね。
そもそも今だから言えることなんですが、起業のアイデアなんかってのは、それまでの自分自身の就業経験だったり、生活の知恵からだったり、とにかく一生懸命がむしゃらに頑張ってきた人間だからこそ生み出せるものなんだと思うんです。
しかしながら、僕のそれまでの人生を振り返ってみたところで、当然ながらそんな貴重な経験や辛い生活から得た知恵なんていうのはほとんど無いに等しかったわけで、そんなスッカラカンのバックグラウンドから良いアイデアなんていうのは生まれてくるはずが無かったんです。
加えて、僕にはアイデア意外にも決定的に欠けているものがありました。
それはいわゆる、人との繫がり、コミュニケーションと呼ばれる類の物でした。
とにかく、高校時代、大学時代と振り返ってみても、まともに付き合ってきた友人の数が極端に少なかったんです。
そしてこの状況は、僕が仕事先で長続きしないことにも勿論原因があったと思います。
それと言うのも、これまでの僕の仕事の辞め方というのは、そのどれもが後味の大変悪いものばかりだったんです。
退職の時は、ほぼ全てバックれるように職場から消え、必要な最後の手続きなんて一切取らないというパターンが常習化していました。
こんな状況でしたから、当たり前の事なんですが会社を退職した後に付き合いの続く人なんて全くいなかったのです。
まあこんな風に、僕はタイでの起業に際して飛びぬけたアイデアも無ければ、頼れる人も全くの皆無という、とにかくないない尽くし状態に陥っていたのでした。
加えて、僕はタイでの起業に際して、会社の設立方法なんかもそれとなく調べてみたんです。
やりたいことも決まっていないのに会社設立に関して調べるだなんて、ある意味本末転倒のような気もしましたが、会社を作ったことによって長期滞在のビザが下りるならば願ったり叶ったりだと言うような軽いノリで取りあえず色々方法を考えてみたんです。
けれども、調べていけばいくほど、自分の考えが甘かったのだということを思い知らされました。
何しろ法人設立ともなると、その手続きだけで何万バーツもかかります。
それに、勿論会社を維持するためにも毎月それなりのお金が必要となってくるわけでして・・・。
そんな事をしていたら、自分の用意したお金などすぐに消えてなくなってしまうことなど目に見えていたのでした。
まさか、タイで会社を設立するためにこんなにも費用がかさむだなんて全く知らなかった・・・。
(*普通の日本人からしたら、逆にこんなもんで会社作れちゃうの?!ってノリの金額ですが)
そもそもよく考えたら、130万円ぽっきりで一体全体何が出来るというのだろう。
僕はタイでの起業に関して検索していたパソコンの画面の前で、一気に不安に駆られていきました。
言わずもがな、インターネットに溢れている情報を検索して一喜一憂している程度では、もはやその時点で勝負は決まったも同然だったのです。
しかし、そうやって考えあぐねていた時のことでした。
僕はふと、閃いたのです。
「そうだ、よく考えてみたら、自分にはタイ人の彼女が居るではないか」
「タイで成功しそうな商売を探すんだったら、タイ人に聞くのが一番手っ取り早い!」
そう思い立った自分はさっそくメイに連絡を入れ、タイでの起業アイデアについてアドバイスを求めてみることにしたのでした。