以下の記事は、2013年5月頃についての回想録です。
札幌の新千歳空港から飛び立ち、羽田を経由してバンコクへ。
スワンナプーム国際空港には夕方頃に到着しました。
空港に到着した自分は、すぐさまスマホを取り出してメイに連絡を取ります。
当時僕はタイの携帯電話キャリアであるAISのプリペイドSIMを入れたスマホを持っていたのですが、ちょうど約1ヵ月前にトップアップした分のお金がまだ残っていたようで、空港に到着するなり、すぐさまメイと通話をすることが可能だったのです。
電話をしてみると、メイは空港に既に到着しているようでした。
僕はすぐさまイミグレを通過し、預け荷物レーンからも比較的スムーズに荷物を受け取り、税関手続きを素通りして外へと出て行きます。
そうして辺りを見回してみると、到着客待合のスペースにて、首を長くして僕を待っているメイの姿を発見しました。
飛行機の到着時間が多少予定よりも遅れてしまいましたから。
多分、20分程の待ちぼうけを食らっていたのだと思いました。
そこで、僕はすぐさま彼女に駆け寄ります。
すると・・・。
「キットゥン・ジャン・ル~~イ!!」(意味:恋しかったぁ~~ん!!)
この第一声と共に、僕の存在に気付いたメイもササッと駆け寄って抱きついてきたのです。
約1ヵ月ぶりの彼女との再会!
前回別れた際には、もう二度と会う機会も無いんじゃないかとさえ思えましたが、こうして再会を果たせたときには、この上なく自分は幸せ者だと感じることが出来ました。
もし日本で仕事なんかしていたら、こんなペースでタイに来るなんて絶対に出来やしないですから。
そう考えると、ゴーゴー嬢のハートを射止めるために日本での生活を犠牲にしたことも、あながち間違ってはいなかったのではないかとさえ思えました。
とは言え、いずれにしてもここからが本当の勝負!
そんな心境で、メイとの再会の時を深くかみしめることとなった訪タイ初日だったのです。
タイへの再訪を果たした僕は、当然のようにメイのアパートでの同棲生活を再開することにします。
まあ、タイで起業をするために来たとは言え、何も来てすぐに行動を開始することもないだろうと、少々高を括っていたところもあったのでしょう。
とにかくこうしてまた以前と同じような、ぐうたら生活が始まろうとしていたのでした。
ただ正直、前回とは異なる点もありました。
それはズバリ、彼女が仕事へ行くことに対して、僕が初めて直接的に難色を示して見せたということだったのです。
前回の訪タイ時に初めてメイと出会ってからというもの、僕はゴーゴー嬢と言う職業に対して一定の理解を持っていました。
ところが今回、僕の考えはすっかり変わってしまっていたんです。
まあ、正確に言えば、タイへの再訪や起業をすることについて彼女に電話で相談していた頃から、夜の仕事に対する僕の意識や理解は否定の方向へと向かっていました。
そんな状況だったため、再びメイのアパートに転がり込んでからというもの、僕は毎日彼女に言い続けたんです。
「今日は仕事に行かないで、そばにいてくれ」と。
そんな僕の言葉に対して、はじめはメイも渋々ながら言う事を聞いてくれていたのです。
ですから、タイに来てから約1週間ぐらいは、毎日メイは仕事へは行かずに、僕と共に過ごしていてくれました。
ところがです。
そんな日々も長くは続きません。
「家族への仕送りのためや、車のローンを支払うためにも、仕事へ行かなければならない」とメイが言い出すんです。
まあ、当然の話です。
けれども、当時の僕はそんな彼女の言う事などあまり耳に入って来ません。
「メイをなんとか自分だけの物にしていたい」
そんなわがままで自分勝手な考えの下、何としてでもゴーゴーバーの仕事へ行くことを阻止しようとします。
「今月の家賃と車のローンは確実に払ってあげるから、安心しなよ」
「その代わり、家族への仕送りは少し減らせる?」
こんなことまで言ってみましたが、当然相手にされません。
それどころか、「自分の家族のことを放っておけと言うのか!」と、喧嘩にまでなってしまいました。
そもそも、僕が再びタイに来てからというもの、メイのフラストレーションは日増しに高まっていたんです。
それもそのはず、訪タイ以前、僕は彼女に対して、「自分がタイに再びやってきた際には、お金の心配なんてもう一切する必要が無いようにしてあげる!」なんて言っていたわけであったのに、実際問題その片鱗すらも見せられないで居ましたから。
当然、メイとしてみれば、この男に騙されたぐらいに思っていたのかもしれません。
でも、対する僕の心境としては、決して彼女を欺いてやろうなんて気持ちは無かったわけです。
あくまで、「その時」が来るまで、資金は温存して置かなければならないと考えていたのでした。
しかしながら、さすがにそろそろ行動を起こさなければならないという焦りも出てきていました。
何しろ、このまま何の代替案も無くただ彼女が仕事に行こうとするのを止めているだけでは、いつか2人の関係が破たんしてしまうのは目に見えていましたから。
だからこそ、僕はまたしても、メイに質問を投げかけたのです。
「今の仕事以外で、何かやりたい事はないの?!」と。
今さら、自分自身の頭の中からは何のアイデアも浮かんで来ませんでしたから。
とにかく、すがるような思いで何か良い答えを引き出そうとしたのです。
僕はメイに対し、立て続けに質問を浴びせかけます。
「メイもわかってると思うけど、今のゴーゴーバーの仕事って、ずっと続けられる仕事ではないと思うんだ」
「そう考えた場合に、将来メイは何をして生活していこうと思ってるの?」
「何か今の仕事以外でやりたかった事だとか、夢は無かったの?」と。
すると、彼女は一瞬沈黙しつつも、おもむろにこう切り出したのです。
「夢だったら一つだけあった」
「小さい時から、自分のお店を持ちたいと思っていたんだ」
「だから、今の仕事を辞めたら、例えば服を売ったりして暮らして行こうとは思っていた」
この言葉を聞いた瞬間、僕は閃きました。
「これだ!」
「僕の出すお金で、メイと共に服屋をオープンしてみよう!」