以下の記事は、2013年2月頃の回想録です。
メイと店を出た僕は、一緒にスクンビットのナイトクラブ「スクラッチドッグ」へと出かけました。
その夜は彼女の友達も加わり、明け方まで踊り明かしたのを覚えています。
メイと付き合えるかどうかなんてまだ全くわかりませんでしたが、一目惚れしたタイ人女性と一緒に居られることそれ自体に、僕は感動していました。
ちなみに、ゴーゴーバーという所では余程ゴーゴー嬢との相性が悪くない限り、お金の力でもって、誰でも万事が上手く運ぶようにシステムが出来上がっています。
で、僕が一緒に店を出たいと言った時の、肝心のメイの反応はどうだったのかと言うと、お店から一緒に出て早々、具体的なチップの金額を交渉してきたりして、かないサバサバしていました。
しかも、チップの金額自体も一晩で5千バーツと、当時としてはかなり高い部類の額でしたね。
嫌われたくなかったので、二つ返事でOKしましたが。
とにかくこうして、その夜は過ぎていったのです。
そして翌日。
その日はホテルにて、メイと昼過ぎぐらいまで寝ていました。
夕方頃、ホテル近くの屋台で遅い昼食を取ることにした僕らだったのですが 、メイは当然その日も店へ仕事に行かなければならなかったため、刻々と別れの時は近づいていました。
複雑な思いの中、言葉少なに2人で頬張ったソムタムとカオパット。
タイに来て初めて誰かと共にした食事でした。
そうして食事を終え、メイが僕の前から立ち去ろうとした時、僕は正直に伝えたのです。
「本当は君ともっと一緒にいたいけど、お金がなくてそれはできない」
「けれど、これからも君に会いたい」と。
もちろん、当時は全くタイ語がわからなかったので、知っている限りの英語でそう伝えたのです。
帰国日の決まっている、2か月間・予算30万円の旅ということもあり、前日のような遊び方を毎日繰り返すことは出来ません。
つまり僕は、金はないけれど自分のために会う時間を作ってほしいという、なんとも身勝手なお願いをしたわけです。
しかし、そんな僕の発言に対し、メイは少しためらったような素振りを見せながらも、
「今日の0時にソイ・カウボーイ近くのセブンイレブンで待ってて」
と言い残し、その日の仕事へと向かっていったのでした。
なんと、彼女はこの日、僕のために仕事を早上がりしてくれると言ったわけだったのです。
この時を境にして(今思えば)
僕は退職後のタイ旅行に来て約1週間ほどで、なんとゴーゴー嬢のガールフレンド(当時23歳)を持つことになったのでした。
旅先で現地の人と恋に落ちるみたいなことは学生時代に何度か想像をしたことがありましたが、 まさかタイ人、しかもゴーゴー嬢と付き合うことになろうとは。
ちなみに、メイがなぜ僕と付き合うことにしたのかって疑問があるかと思いますが、やはり、お互いに歳が近くタイミングが良かったことがイチバンでしょう。 (後からわかったことですが、僕と出会う直前にタイ人彼氏と別れていたそうです)
まあ、もしかすると、僕が案外、タイ人好みの容姿だったということなのかもしれません。
それから僕が日本人ってとこが大きな理由だったのかなあと思います。
付き合った当初、僕は無職だということをメイに言っていませんでした。
(休職中だということにしてました。)
つまり幾ら恋愛関係になったとは言え、日本人と付き合う以上、彼女から僕への経済的期待は少なからずあったのだろうということです。
そのぐらいの根性がなければそもそも夜の世界なんかに足を踏み入れませんからね。
とにかく、こうして彼女と僕は、ゴーゴー嬢とその客という関係から恋愛関係へといっきに発展したわけですが、メイとの偶然な出会いによって僕の旅は早くも一変することとなります。
具体的に言うと、約2ヵ月間の旅行日程を全てバンコクで過ごすこととしたのです。
思えばメイと出会ったときから、すでに自分は旅人ではなくなっていたんだと思います。
本当だったら、東南アジアを周遊したり、タイの色々な土地を周って現地の様々な人との交流を深めるなんていう淡い幻想を思い描いていたりもしたのですが、バンコクの地で彼女と出会ってしまった以上、もはやそういった旅をする意味も見いだせずにいたのです。
だからこそ、僕は自分の旅が終わるまで、出来るだけメイと一緒に居ようとその時から決心したのでした。
とは言っても、 毎日一緒にいるためにペイバーするようなお金は、もちろん僕にはありません。
(ペイバーとは、ゴーゴー嬢を店から連れ出す時に使う言葉です)
だから毎晩、ひたすらメイの帰りをホテルで待ちました。
付き合いが始まってからというもの、メイは仕事終わりに毎日、僕のところへと帰ってきていたのです。
遅い時は深夜の4時以降にもなりました。
彼女の仕事終わりに、ゴーゴーの友人を引き連れて、タイのローカル・ディスコに行くなんてこともしょっちゅうでした。
で、こんなことをやっていると当然、毎日起きるのは昼過ぎになるわけです。
完全に昼夜逆転生活ですね。
昼間に寺院観光に行きたいなんて気には、まずなりません。
毎日夕方頃起床、就寝は翌日明け方っていう生活が暫く続きました。
完全に普通の旅行者じゃなくなっていたわけです。
夜の仕事をする女性と付き合うと、まさに自分まで夜型人間になってしまいます。
しかし、メイも大変だったと思います。
だって、いつも明け方まで僕と遊んで、夕方頃に起き、2日に1度ぐらいは自分のアパートにも帰っていたわけですから。
と言う訳で、こんな感じで彼女の仕事終わりを狭いホテルの部屋で待ち続けるという沈鬱な生活を暫く続けていたのですが、やっぱり部屋での一人の時間が無性に退屈だったんです。
自分がホテルで待っている間の、メイの様子も正直気になりました。
「もし自分がお金を沢山持っていたなら、こんな思いをせずとも済むのに」と。
でも、現実問題、それは叶わないこと。
それでも彼女の仕事中の様子が気になるということで、たまにメイの仕事先のゴーゴーバー・バカラに遊びに行くようになったんです。
節約旅行のはずが、完全に夜の街へと入り浸り状態。
ぶっちゃけ、メイからしたら僕が来ると仕事が遣りづらいので、いい迷惑だったと思います。
でもやっぱり、他のお客さんに対しての嫉妬心みたいなものもあって、我慢できなかったんですよね。
こうしてその後、割と頻繁にメイの仕事先のゴーゴーバーに顔を出すようになった僕なのですが
もちろんお金なんて少ししか無いんで、派手に遊ぶことは出来ません。
しかし、ちょくちょく同じゴーゴーバーに顔を出していると、お金を使っていなくてもお店のスタッフに顔を覚えられるようになるんです。
まあ、もちろん一部のスタッフは僕らの仲を知っていて、それでよく話すようになった人もいましたが。
で、そうやってお店の人達に顔が割れていく中で、ゴーゴーバーのママさん(ニックネーム:チュリーママ、40代)と知り合うようになったんです。
(ママさんっていうのは、ゴーゴー嬢のお世話係りみたいな立ち位置の人です。だいたい年配の人が多いです)
このママさん、なぜか僕のことを気に入ってくれて、僕がお店に来た時はしょっちゅう奢ってくれるようになります。
まあ、奢ってもらって悪い気になる人間はいません。
当然僕も、ママさんに擦り寄ります。笑
こうして毎回、僕がお店に出入りした際には一緒に話す間柄になっていたのですが、そうこうしているうちに、ママさんからパタヤ旅行に誘われることになったのでした。
その際、僕は割と軽い気持ちでママさんの申し出を承諾したのですが・・・
これが後に結構やっかいなことへと発展していくのであります。